AIアルゴリズムを独自開発し、画像・動画解析に関するAIサービスを提供しているニューラルポケット株式会社が2020年8月20日にマザーズに上場します。
ニューラルポケット株式会社は2018年1月に東京都千代田区で「ファッションポケット株式会社」の名称で設立されました。
1通の謄本、プラス一の部を取得しての分析になります。
創業から約2.5年でのIPOです。このスピードは分析史上最速IPOの会社です。
設立から僅か8カ月ほどの期間にシードファイナンスを二度おこなっており、バリュエーションもあっという間に約50億になりました。
シード1・シード2の一部はみなし優先株式での発行と思われ、会社法・登記実務上の観点からも面白い分析となったと思います。
バリュエーションの上がり方が半端じゃありません。設立から2カ月足らずで5億、その半年後に50億です。
スピード感が凄いので、設立時点から投資家との間で既に出資の話があったと思われます。
これほどまでに短期間に調達・バリュエーション上昇は見たことがないのですが、内部の方々の経歴が関係しているのでしょうか。
※IPOの時価総額は2020.7.15時点の予想額になります※
エクイティでの調達金額は累計約9.4億円でした。
各シリーズの投資家情報は目論見書から引っ張ってきました。
設立時 | 重松路威氏 |
シード1 | UTEC4号投資事業有限責任組合、株式会社オフィス千葉、ミシュースティンドミートリ氏、篠塚孝哉氏、上野山勝也氏 |
シード2 | UTEC4号投資事業有限責任組合、株式会社オフィス千葉、ミシュースティンドミートリ氏、篠塚孝哉氏 |
シリーズB | 株式会社SMBC信託銀行(特定運用金外信託未来創生2号ファンド)、 シニフィアン・アントレプレナーズファンド投資事業有限責任組合、 SMBCベンチャーキャピタル4号投資事業有限責任組合、 みずほ成長支援第3号投資事業有限責任組合、 Deep30投資事業有限責任組合、 ミシュースティンドミートリ氏、 篠塚孝哉氏 |
みなし優先株について軽く触れておきます。一旦普通株式で発行しておき、次の資金調達の際に、優先株に転換させるスキームがみなし優先株です。(先例:昭和50年4月30日民四2249号)
シード1・2で発行した普通株の数は2,157株でその内の2,043株をそれぞれA1種とA2種に転換しています。
転換されなかった114株は目論見書の特別利害関係者等の株式等の移動状況より上野山勝也氏(PKSHA Technology社代表)が保有していた株と思われます。
普通株式としてのみなし優先株を発行する際に、あらかじめ全株主との間で契約を結んでおく必要があります。これは会社法上の要請ではありませんが、契約を巻いておかないと、いざ転換という時に困ることがありますので、実務上必ずやっておきます。
転換の際に必要な手続きとしては、今回のニューラルポケットでいえば、B種を発行する際に、普通株の一部をA1種、A2種に転換していますが、株主総会の他に、合意書と同意書も必要になります。
合意書は契約になるので、当事者は優先株に転換する株主と会社です。
一方、同意書は普通株式のままでいる株主のものでOKです。
また、種類株式発行会社になる際に、会社法第322条第4項の定めも併せて設定している場合は、その種類の株主全員の同意も必要になります。
ストックオプションは全部で8回発行しており、IPO時点での潜在株の割合は8.3%です。
回数 | 割当日 | 個数 | 株数 | 行使価額 | 発行時点の 割合 |
第1回 | 2018.7.27 | 311 | 311,000 | 44 | 2.71% |
第2回 | 2018.11.7 | 159 | 159,000 | 407 | 1.31% |
第3回 | 2019.2.27 | 94 | 94,000 | 501 | 0.77% |
第4回 | 2019.3.27 | 67 | 67,000 | 501 | 0.50% |
第5回 | 2019.5.15 | 52 | 52,000 | 501 | 0.39% |
第6回 | 2019.6.19 | 67 | 67,000 | 501 | 0.50% |
第7回 | 2019.9.18 | 238 | 238,000 | 501 | 1.78% |
第8回 | 2020.4.27 | 233,500 | 233,500 | 1,394 | 1.75% |
第8回以外は株価算定はせずに直近の株価を権利行使価額とした模様です。
設立からIPOまでの期間が約2.5年と、凄いスピードの会社でした。みなし優先株を使ったファイナンスをしていたりと分析していて面白かったです。今後の動向も注視していきたいと思います。