スタートアップベンチャーが気を付けるべき株のこと



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スタートアップベンチャーが気を付けるべき株のこと
企業法務 スタートアップ 株式
 令和元年7月26日 公開




会社の創業時、誰がどれだけの株式を持っていればいいのだろう、と非常に悩ましい問題ですが、持株比率を決める際に考慮しておくべき点はいくつかあります。また、シードラウンド、エンジェルラウンドを想定している場合は、どれくらいの持株比率がいいのか、スタートアップベンチャーが気を付けるべき株式に関する事項をまとめました。


創業時の持株比率について

会社を複数人で創業するにあたり、気を付けたいのが持株比率です。

誰にどれだけの株を渡せば、会社を運営していくうえでスムーズな意思決定ができるのか、具体例を交えて説明します。


適切な持株比率

例えば、仲間3名で会社を始めるとした場合、各自が1/3ずつ株を持つというのはよくある話です。

1/3ずつ株を持ちあった場合、株主総会の決議はスムーズに運ぶのでしょうか。

1/3ずつ株を持ちあうということは各自が発行済株式総数の33.333・・・%を持つことになりますので、決議したい議案を他の2名から反対され、否決されてしまうことがあり得ます。

また、他の2名が賛成したら、代表取締役として反対していても可決されてしまうことになります。

代表取締役が50%、他の2名で50%を持っていた場合も同様です。株主総会の普通決議は過半数(51%)以上の同意が必要なため、こちらはデッドロック状態になってしまいます。


持 株 比 率

    

1/2、1/3では、代表取締役1人では決議できない


このようなデッドロック状態にならないように、創業にあたってメンバーと話し合い、代表取締役に株を集中させておくのをお勧めします。

代表取締役は、事業を進めるにあたって、資金調達のターンでは投資家と交渉したり、社内の環境整備や業務上の意思決定をしたり、時には矢面に立つ事もあります。株は代表取締役に集中させたいと申し出れば不公平感は感じづらくなると思います。


理想の持株比率

創業時、代表取締役が100%の株を持っていることが理想です。100%が難しい場合であれば、90%以上は持っていたいところです。

90%以上の株式を代表取締役が保有するのが難しい場合、特別決議を決められる総議決権の株数を持っていることをお勧めします。

つまり、株式の2/3(67%)以上です。


特別決議の一例(取締役会を設置していない会社)
1.株式の発行
2.新株予約権の発行
3.合併などの組織変更
4.定款の変更など

代表取締役が2/3(67%)以上の株を持つことが難しい場合は、最低でも過半数の数の株式(=51%)以上は持っておくべきです。

代表取締役が51%以上の株式を持っていれば、役員の選任については代表取締役が1人で決定できますし、普通決議は代表取締役がコントロールできます。

では代表取締役が51%以上の株を持っていれば安心かというとそうではなく、出資を受ける予定がある場合は、多めの株を持っていないと、シードラウンド、エンジェルラウンドで過半数を下回ってしまうことになります。


シードラウンド後

  


代表取締役の持株比率が過半数を割ってしまう


新規の投資家が5%の株式を取得した場合、既存株主の持株比率は相対的に下がってしまいます。代表取締役が51%を持っていたとしても、持株比率が図のように低下してしまいます。今後の資本政策を見据えて、十分な持株比率になるよう考えておく必要があります。

株の配分の失敗例

実際によくある話として、創業時~シードラウンドで役員以外にも株を配っているケースも散見されます。その時はよくても、会社が成長するにつれ、配らなきゃよかったと後悔する場面がでてきます。

例えば、あまり重要でないメンバーにまで配ったが、会社を辞めて海外にいってしまい連絡がつかなくなった等、行方不明株主が出てきてしまうと、株主総会招集通知に係る期間短縮の同意などが取れなくなり、機動的な株主総会運営が求められるベンチャーにとって致命的な問題になりかねません。

株は会社にとっての生命線なので、ご注意ください。


創業株主間契約の重要性

IPO(株式公開)かM&Aを目指し、気の合う仲間3名で会社を設立したとします。

最初は同じ目標を目指し、事業を進めたとしても、途中で会社をやめると言い出すメンバーも出てきたりします。単に辞める話ならいいのですが、最悪仲間割れをし、関係悪化状態になることもあるでしょう。

仮に辞めたメンバーが株を持ったまま、ライバルの会社に転職してしまったとなったら大変です。取締役を辞めていても株主なので、会社の株主総会に毎回呼ばなければなりませんし、決算報告書等も渡さないといけません。

このような事態に陥らないよう、会社を去ったのなら株を戻すように「創業株主間契約」を結んでおく必要があります。

このメンバーでケンカ別れなんてあり得ない!と考えていても、何が起こるか分からないのが現実です。万全の体制で資本政策をすすめられるよう、ありとあらゆる事態を想定し、準備をしておくのが重要です。

まとめ

創業時の持株比率について、誰がどれだけ持っているのが適切なのか、答えはありません。

ですが、今後の資本政策や会社の進むべき道から、最低でもこれだけは代表取締役が持っていたいという数字は出てくるものです。

創業者間の持株比率は最初に間違うと、やり直すのに大変な労力を割くことになりかねませんし、そもそも調整に失敗することもあります。また、事業がスケールアップし、本業にリソースを割くべきなのに、別のタスクにリソースを割り当てることは、避けるべきです。

持株比率についてご不安な場合、相談いただければと思います。





磯崎さんが書かれた「起業のエクイティ・ファイナンス」に創業株主間契約について詳しい内容が記載されています。また巻末には、創業株主間契約の契約書ひながたも付いているのでとても良本だと思います。

また、起業家が投資を受ける際に知っておくべき知識も網羅的に書かれているので、ぜひ読んで欲しい書籍です。